【依田紀基 自戦解説】ヨセの考え方(後編) ― 出入り計算とヨセの攻防

出典:オンライン依田塾「上達のためには絶対聞き逃せない講義」第41回(2023年9月16日)

講師:依田紀基九段

構成:依田太陽(アマ高段)


はじめに


前編では「ヨセはいつから始まるのか」という考え方について、依田紀基九段の実戦(対 大竹優七段/依田黒番)を題材に取り上げました。

後編は、依田紀基九段ご自身の対局を題材に、実際の中終盤でどう損得を計算し、どんな手順で打ち進めたのかをたどります。本人の考えや言葉の意図を曲げてお伝えしてしまわないよう、解説時の言葉をほぼそのまま文字に起こしています。


前編はこちらからご覧ください

https://gonote-app.com/article/rqYEbQav93zl26Xmiqap

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参考図1.実戦の進行


依田紀基:

「白地を荒らしに行くのが、この局面では大きいかなと思って、まず1回カケて受けさせ、それからツケていきました(黒2-4)。なぜツケているかというと、小ゲイマの構えだからです。小ゲイマって非常に硬いんですね。硬い石にはツケていって、さらに固めさせて、相手の石をダブらせよう(こりがたちにしよう的な)、という狙いで打ってるわけですね。それで下辺の白模様を荒らしてしまおうと。」


「この時点で、ヨセに入っているとは言っても、もう本当にヨセで、1目2目を争う状況なので、非常に神経を使うんですね。ヨセに入ったから楽かと言ったら、そうじゃない。その1目2目の損が致命的になり得るのでね。(こういう早い段階で)得失を巡ってそういう戦いが始まる、ということもあるんです。」

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参考図2.出入り計算の考え方

この白1のコスミは絶対の手でした。(1手目分岐)黒から逆に二の二にツケる形になる(黒2-4)と白に生きるために十分のスペースがなく、黒□も要石になってくる(それまでは切られている白石が両方生きているため要石とは言い難い)。またそもそも出入り(黒から打った時と白から打った時の地の差)も非常に大きく、黒Aオサエに対しBハネが先手と見れば先手10目ぐらいの手になる(考え方は後述を参照)。黒だからこのコスミは絶対なんですね。」


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白1から打つと6までが先手である。それに対して黒2で2-2にツケて4まで打った後、黒Aが先手である(黒の権利とみなす)この差が、白地5目、黒地6目なので出入り(合計)10目くらいの手(現状の計算上11目)になります。


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「この状況だと、白左上隅が15目、左下隅が8目くらい、で右下隅が10目くらい、右辺が10もくよりはありそうですね。そうすると、全部で40ちょっとですよね。黒は右上隅が20目、左辺は20目以上、右下は(黒2線にオサエたら)黒10目ちょっとありますよね。そうすると合計50目ちょっとだから、まだまだ細かいんですよね。」

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参考図3.その後の攻防と大竹七段の妙手


依田紀基:

「白1に対して黒オサえるのが普通なんですよ、これは極めて普通。オサえぐらいだったと思うんですね。オサえで黒は別に悪くはなかったんですけども。少しこれまた、(黒2ツケと打ったのは)欲張りだったかもしれないですね。でもツケたくなるところではあるんですよ、気持ちとしては。」


「理想としているのは何かと言ったら、こうやった時に、(白3分岐1つ目)オサえてくれると、黒4ハサミツケから黒8にオサえるのを理想としているんですね(こうすると白Aが後手になる、の意)。それで、この時にもし、こういうふうに(白3分岐2つ目)ハネ出して取ってきた場合、こういうふうにツイでいて(黒10)。これは中央を外に突破していて、さらにもうAにオサえる必要がなくなっていると(なぜなら×も空いていて両方裾が空いているから)。要するに、地にする必要がない場所になっているということで、その見返りとして、ここを突破しているから、これは悪くないんじゃないかなと思っていて、ツケているんですけど。」


「ただし、ツケた時に、やはり容易には受けてはくれないですよね。白3に来ますね。でもAは少し受ける気しないので、黒4に打ちます。ここで白5から7が鋭いんですよね。これで、右辺(荒らされた上に)白地にされたんですけれども、黒も一応まるで損しているのかっていったら、そうとも言えなくて。一応中央に進出してきましたので。あと、黒16にツキアタリを打って、一応(黒2のところに)ハネを打ってる状態なので、少し白地も減らしている意味があるから、まあまあなのかと。若干損している気もするんですけども、しょうがないですね。」


後編まとめ

中盤の具体的なヨセを通して、出入りでの損得計算を学び、そしてヨセでも数目を巡る、両方の思惑が交錯した戦いを見ることができました。自分で棋士の碁を並べる際も、こういった視点で考察しながら並べられると、また一段と面白いのではないでしょうか。


また前編をご覧になってない方はこちらをご覧ください!

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