切らせて利き筋を作る(後編) ― 四線の肩ツキから組み立てる発想【依田紀基 トップアマ同士の実戦の解説】

目次

出典:オンライン依田塾 研修生コース 対局解説(2022年10月)

講師:依田紀基九段

構成:依田太陽(アマ高段)


はじめに

2022年10月オンライン依田塾の研修生コースから、トップアマ同士(一方はのちのプロ棋士)の対局の解説の冒頭部分を取り上げます。AIの影響でよく打たれるようになった四線の肩ツキから展開される変化を、依田紀基九段の解説に沿ってたどります。


前編はこちら⇩

https://gonote-app.com/article/d2CX8tkdYCIuGvh4RxL3


本人の考えや言葉の意図を曲げてお伝えしてしまわないよう、解説時の言葉をほぼそのまま文字に起こしています。

前編をご覧でない方は、ぜひこちらからご覧いただけると理解がしやすいかなと思います。


参考図1.実戦の進行

AI登場前には見られなかった四線の肩ツキ(黒17)から展開される形です。

37手目までについては前編の解説をご覧ください。

碁盤を読み込み中...

参考図2.二段バネの基本と脱出の工夫


依田紀基:


別に白も悪そうに見えないけどね。

ーーー


ケイマとツケてね。難しい戦いだね。

そうそう、黒もね、その二段バネ(黒4)が筋ですね。

大体、この二段バネの形に、切ったりアテたり(白3時点AとB)するっていうのは、大体、筋が良くなって、黙って二段バネが筋の良い手なんですよね。こういう時って、切りを打ったりするっていうのは筋が悪いっていう話、僕も何回かしたことあるけど、こういう時、大体切るのって筋が悪いってわかる?


筋の良し悪しと、手の善悪っていうのは必ずしも一致しないんだけども、筋の良い手に良い手が多いっていうのは事実だから、それは筋を勉強する必要があるわけだよね。筋を知らずに筋が悪い手を打っていると、大体それは悪い手だから。筋を知っていて、(そのうえで根拠があって)筋の悪い手を打つんだったら、それは良い手の可能性が高いわけだよね。


それで、大体こういう時って、どっちを切るのも筋が悪くて。形としてはね。

それで、こうつないで、ツイだか(白5、黒6)。


(6手目時点の図)通常(Aに)ハネるんだけど、通常はね、そうすると、(Bに)ノビられてうまい手がないと見たのかな。うまくないのかな?これ。トビは結構変則的な手だけども。そうか、うまくないか、これ。うまくなさそうか。

いや、こういうふうにやっていくのは具合が悪いよね。


―――しばらく考える―――


(白分岐7~24までを示して)これまずくない?これでまずいのか。

黒3子を取ると、(黒22)アテを打って、こういうの(黒22や24など)が全部先手になっちゃうから、これダメだね。だから、これに頑張れないんだね(白分岐7~11のこと)。

こういうふうにやっても(白21手目分岐から)、これはもうアテから、これで潰れてしまうから。


ということですね。

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参考図3.工夫したけど咎められたら脱出できなかったかも


依田紀基:


それで、(実戦に戻って)ここで、なるほど、(白7から9)筋いい手だね、それ。一応それで外出られるか。

これ切る手はないからね(白11手目時点A)。


この手っていうのは、結局(黒10分岐)こう行っても(つきあたっても)、ここへノビ(白11)ておけば、これで・・・

こういうふうにやっても、これで、これは攻め合いに勝ててということなのかな?(確証はなさそうな様子)


―――しばらく考える(黒10分岐以降の変化がおぼろげに浮かんできた様子)―――


―――対局者にも質問してみるが、結局白マズそうという結論―――


そうか、つきあたりがあったね。

最初はこの筋(白7~9)がいいかなと思ってたけど。そうすると、やっぱりちょっとうまくいかなかった。


筋のいい手ではないけど、こんなふうに(白分岐1~3)、素朴に外に出ていったらどうなんだろう。

これもあったかもしれないな、一応。


それで?(実戦に戻る)

これね、このツギ(白13手目)っていうのも、あまり面白い手ではないんだよね。

見えないアキ三角って言ってね。

どういう意味か分かる?(参加者に聞く)

―――「利き筋があったら、利きのところに打ったらアキ三角になっちゃうから」

うん。

これは、結局、利き筋が、白から見た時に、結局これ(白13手目時点□)が利き筋でしょ。

ここが利き筋になっているから、これって要するに、アキ三角ができる、大アキ三角場(ダンゴ石のこと)が石がいっているのとほぼ同じなんだよね。

だから、そのツイでいる手(白13のこと)が、外に出ているって言っても、面白い手ではないなっていうことを言って


でも、両方ともなかなか筋に石がいっているから、見応えがあるよね。

うん。

黒もノゾキ(黒22手目時点△)を打たれないようにそこに守ってね。

うん。

両方ともかなりの打ち手だよね。

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参考図4.鋭すぎる参加者に教わる元世界戦覇者(おまけ)


依田紀基:


(実戦が少し進んで)

(白1~3を見て)これさ、ちょっと待ってね。

こんな手(白1分岐)ってないのかな。もしね、これにこう打ってくれる(白分岐1~7)んだったら、なかなかいい感じなんだけどね。まあ急所ではあるんだよね。


―――ここで参加者(おそらく対局者)が下ツケ(黒2分岐)を即答―――


ああ、なるほど。まあこうか(分岐後白3)。


―――ここでまたハネ(分岐後黒4)が参加者によって示される―――


うん。(少し考えて)なるほどねぇ。

これはあまりうまくいかなかったかね。なるほどねぇ。

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後編まとめ


今回は、実戦で展開された変化に対して、「こう打ったらどうする?」といった考察を深堀りした様子を取り上げました。前編の「切らせて利き筋を作る」発想から始まった変化やそれに対する考察、また基本的な筋の良し悪しの考え方を学ぶことで、また一つ実戦で活用できる新たな引き出しができるのではないでしょうか。

盤上で並べながら、依田紀基九段の言葉や対局者の「意図」を読み取っていただければ幸いです。


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