出典:オンライン依田塾 研修生コース 実戦解説より(2022年8月)
講師:依田紀基九段
構成:依田太陽(アマ高段)
はじめに
前回の「ハネの利かしと、その影響 ― プロも見落とす盲点」で取り上げたのと同じ一局、トップアマ同士の対局からの一場面です。前回は序盤の展開を中心に追いましたが、今回はその中盤――黒が相手の勢力圏へ打ち込んでいった、競り合いの真っ最中に現れた手筋を取り上げます。
そこまで難しい手筋ではないのですが、ちょっとした「うっかり」で手筋を見落としてしまったがために展開が大きく崩れてしまった、そんな場面を取り上げていきます。
1.実戦
中盤、白が中央の石を切断して取ったあと、フリカワリのような形で、32手目で黒は相手の模様に深く打ち込んでいきました。黒32手目時点△2子があることで白にとってかなり厳しく、両方をつながることはほぼ不可能といったような形です。その後黒42まで進行し、右上隅の白は取られたかのように見えました。
しかし実戦は、ここから一気に流れが変わります。
2.セキトウシボリ
白は1から3と切って、黒をとがめていきます。
一見黒二線に切断して取れるように見えますが、というか実際取れてはいるのですが、この取られる石をうまく活用し、一線にサガって2子にして捨てて、さらにほうりこんで黒のダメを詰めるようにシボっていきます。
実戦は黒番がうっかりしたことを悟って3子をつながなかったのですが、つなぐと(12手目分岐後23手目まで)このようにすべて取られてしまいます。
実戦は3子を白がとることに成功し、すごい抜け殻になりました
形勢が180度変わったといってもおかしくないと思います。
講師の依田紀基九段もびっくりした様子。
対局者本人は当然セキトウシボリを知っているのですが、実戦で持ち時間もなかったのか、(ネット碁なのでもしかするとクリックミスかもしれませんが)うっかりしてしまったみたいです。
3.黒はどうすればよかったのか
では、黒はどう打つべきだったのでしょうか。
といってもそんな大した話じゃないんですけど、普通に黒1とノビてればよかったというだけです。
依田九段も、この後の展開ついてはあまり言及していなかったのですが、これで白右上の石はほぼ取られているような形でかなり黒が打ちやすいのではないでしょうか。
おわりに
今回はトップアマ同士の実戦で出現したセキトウシボリについて取り上げていきました。
相手の石のダメを詰める、かなり有名な手筋で、有段者にとってはそこまで難しくはないものの、実戦になると意外と見落としてしまってそれが原因で勝負を分ける――今回はそんな一例でした。
書いている私(太陽)も、いまだに終盤のうっかりは課題です。「凡ミスさえなければ強いのに」と言われ続けて10年以上、いまだに改善される見込みはございません。
なんとかならないものなんでしょうか。
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