囲碁が脳を進化させる ―(第1部)名前がまだ書けないうちに数手先を読みだすこども ―

目次

はじめに


ご覧いただきありがとうございます。棋士の囲碁スクール 依田太陽 と申します。

高校卒業後から「こども囲碁サロン」で囲碁を教えて、今年で6年目になります。毎週たくさんの子どもたちと接し、講師ながら毎回こどもたちに元気をもらっています。


この記事は『囲碁が脳を進化させる』全3部の第1部です。ここでは、私が毎日教室で目にしている、こどもたちの姿からお話しさせてください。

毎週囲碁を習うこどもたち ― でも理由は「大会」じゃない

おかげさまで、当サロンはたくさんの方に選んでいただいていて、「予約がなかなか取れない」と直接言われることも少なくありません。本当にありがたい限りです。


当サロンは、日本棋院から徒歩5分ほどの、落ち着いた住宅街に位置します。立地を聞くと、「日本棋院のすぐ近くだから、大会に出たい強い子が集まってるんでしょ?」と思われるかもしれません。しかし、実際はそうではありません。親御さんや生徒さんと直接お話ししていてわかるのですが、大会に積極的に参加するようなお子さんは、3人に1人もいないと思います。


つまり多くの親御さんは、「勝たせたい」「棋士にしたい」から通わせているのではないのです。囲碁が持つ知育としての側面 ― 考える力、集中力、最後まで向き合う姿勢が育つこと ― にこそ魅力を感じて、お子さんを預けてくださっている。私は日々、それを肌で感じています。

私が大切にしていること


私が相手にするのは、主に園児さんや保育園児さんなどの「未就学児」がボリュームゾーンです。そんなこどもと接するうえで、私が今いちばん意識しているのは、「お子さんに無理強いせず、楽しんでもらうことを第一にする」ということです。具体的には、一人ひとりの様子や性格をよく見ながら、このような感じで接しています。


  • こども自身に「どうしてそこに打ったの?」と言葉にしてもらい、自分で考えて理解できるように促す
  • とにかくたくさん石を取る体験をしてもらって、そのたびに思いきり褒める
  • ときには、ちょっとじゃれ合って笑い合う
  • 最初と最後には、ご挨拶をする


最終的に、お子さんが「囲碁が楽しかった!」「わかるようになった!」と思えること。そして、その様子を見た親御さんが「楽しそうだな」と安心してくださること。その結果として、長く続けてもらえること。そこを考えながら務めるようにしています。


(もしかすると、子どもの成長や私自身の経験で、これから意識が変わっていくこともあるかもしれません。でも今は、「楽しい」が何よりの土台だと信じています。)


囲碁は、強くなろうとすればいくらでも厳しくできる世界です。でも、こどもにとっての最初の入り口は、勝ち負けより前に「楽しい」であってほしいと思っています。

昨日まで碁石をばら撒いていた2歳の子が、数手先を読みはじめる


ついこないだまで、碁石をばら撒いてはしゃぎ回っていた2歳くらいの子も、レッスンを重ねるごとに碁石を「交点に置く」ことを覚え、相手の石を囲んで取れるようになり、石取りゲームで大きな石もたくさん取れるようになり、次第に、相手の石を数手追いかけて取れるようになり、やがて、陣地を少し数えられるようにもなってくる・・・


ここまでで、早くても半年はかかります。決して「すぐ」ではありません。でも、この過程でこの子の脳の中では、ものすごいスピードで何かが育っている ― それは、言うまでもないことだと思います。


面白いことに、そして碁石の数を比べたり、陣地の大きさを見比べたり、数手先を読んだりと、大人でも未経験だと難しいようなことができるようになってるのに、自分の名前を書いたり、数字を書いたりはまだできない ― そんな子が、ざらにいるんです。


「囲碁をすると思考力が~」みたいな言葉で片付かられるとあまりピンとこないですが、こう考えるとそのすごさに気づかされます。


最近開催されている渡辺和代キッズカップは、未就学児を対象とした大会で、早くも先日の開催で第15回目だったようです。回を重ねるごとにレベルもどんどん上がり、もう有段者じゃないと優勝できない、なんなら高段者でも優勝できなかったりするらしいですね。

でも、普段からこどもの無限大の可能性を見せつけられている私としては、「ほんとかよ」という懐疑的な思いにはどうもなれないというか、あまりうまく言語化できませんが、そんな思いです。


~第2部「なぜ難関校は囲碁が強いのか」へ続く~


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